障害者雇用率制度について

年度末でお忙しい時期かと思いますが、
新年度に改正施行される法律の内容確認はすでにお済みでしょうか?

本日取り上げるのは、障害者雇用促進法の改正についてです。
法律の改正自体は令和4年に行われており、順次施行が進んでいる最中ですが、
その一つに令和7年4月1日に新たに施行される内容があります。
今回はその新たに施行される「除外率の引き下げ」についての内容を含め、
障害者雇用率制度、障害者雇用納付金制度について確認したいと思います。

1.障害者雇用率制度

障害者雇用率制度とは、
障害者が能力を最大限発揮し、適正に応じて働くことができる社会を目指すため、
一定規模以上の事業主に、従業員に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にすることを義務化した制度です。

令和4年の改正により、この法定雇用率は段階的に引き上げられ、対象事業主の範囲は段階的に引き下げられることとなりました。
現在は以下の表の通り、民間企業の法定雇用率は2.5%です。

厚労省HP 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について より

一方で、一律に雇用率を適用することがなじまない性質の職務もあることから、
障害者の就業が困難と認められる業種について「除外率」が設定されてきました。

除外率とは?

 法定雇用率に基づいて雇用する障害者を計算する際、
 除外率に相当する労働者を控除し、障害者雇用義務を軽減する制度です。
 実際には平成14年改正により、平成16年に廃止された制度ですが、
 経過措置として現在も存在しており、この除外率は段階的に引き下げ、縮小することとされています。

令和7年4月1日から、この除外率が一律10%引き下げられ、以下の表のようになります。

厚労省HP 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について より

2.企業の法定雇用障害者数の計算

この法定雇用率を達成するために、企業が雇うべき障害者の数を法定雇用障害者数といいます。

法定雇用障害者数を計算する式は以下の通りです。

① 除外率がない業種の場合
   法定雇用障害者数 =(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率

② 除外率がある業種の場合
   除外人数     =(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×除外率
   法定雇用障害者数 =(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)-除外人数 ※小数点以下は切り捨て

ここでいう常用労働者とは、週所定労働時間が30時間以上の方、短時間労働者とは週所定労働時間が20時間以上30時間未満の方です。
週所定労働時間が20時間に満たないパート・アルバイトの方についてはカウントしません。

また、法定雇用率の対象となる障害者数の算定については、
その障害の程度や週所定労働時間数などでカウント方法が異なります。
以下の表に基づいて、法定雇用障害者数を達成できるかよく確認する必要があります。

※当分の間、精神障害者は1人とみなす。

厚労省HP 障害者雇用率制度の概要 より

3.障害者雇用納付金制度

① 制度の目的

障害者雇用をするためには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備等が必要となることから、
一定の経済的不安を伴うことがあります。
そのため、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、
事業主に対して公平な負担を求めること、障害者雇用の水準を高めることを目的として
「障害者雇用納付金制度」が設けられています。

② 法定雇用率未達成の場合

常用労働者数100人超の事業主が、上記の法定雇用率を達成できなかった場合、
障害者雇用納付金として、法定雇用障害者数に不足する障害者1人当たり月額50,000円の納付が必要です。
なお、この納付金を納めることによって、障害者雇用の義務を免れるわけではありません。

また、法定雇用率を達成できなかっただけでなく、
障害者雇用の数が法定雇用障害者数を大きく下回っている企業に対しては、
ハローワークから障害者雇入れ計画作成命令が行われることがあります。
そちらの対応も怠っていると、適正実施勧告がなされ、それでも従わない場合は、会社名が公表される場合もあります。

③ 法定雇用率達成の場合

(1)常用労働者数が100人超の事業主の場合
 →法定雇用障害者数を超えた人数1人当たり月額29,000円(※1)の障害者雇用調整金が事業主の申請に基づき支給されます。
  (※1 支給対象人数が10人を超える場合、当該超過人数分への支給額は1人当たり月額23,000円)

(2)常用労働者数が100人以下の事業主の場合
 →各月の常時雇用障害者数の年度間合計数が一定数(※2)を超えて雇用している場合、
  (※2 各月の常時雇用している労働者の数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)
  その一定数を超えて雇用している障害者1人当たり月額21,000円(※3)の障害者雇用報奨金が事業主の申請に基づき支給されます。
  (※3 支給対象人数が35人を超える場合、当該超過人数分への支給額は1人当たり月額16,000円)

(1)、(2)ともに申請に基づいて支給されるものですので、申請準備を忘れずに行う必要があります。

④ 申告・申請について

上記の納付金等についての申告や申請には期間が定められており、短期間で対応しなければならないものもあるため注意が必要です。
障害者雇用状況報告についても合わせて以下で確認しましょう。

障害者雇用納付金、障害者雇用調整金の申告申請、納付
  対象:上記②③(1)の条件にあてはまる事業主
  期間:4/1~5/15
・障害者雇用報奨金の申請
  対象:上記③(2)条件を満たす事業主
  期間:4/1~7/31
・障害者雇用状況報告(毎年6/1時点での状況をハローワークへ報告)
  対象:従業員40.0人以上の事業主
  期間:6/1~7/15

4.さいごに

昨今の人手不足やノーマライゼーション等の観点から考えても、今後ますます障害者雇用の重要性は高まってくることでしょう。
これを機に一度自社での障害者雇用について再考されるのもよいかもしれません。
障害者雇用に関連した助成金などの充実も図られていますので、ご興味がある方は詳細についてお問い合わせください。

(ご参考)
厚生労働省
 事業主の方へ( 従業員を雇う場合のルールと支援策)
 1.障害者雇用率制度
 2.障害者雇用納付金制度
 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について
 除外率制度の概要
高齢・障害・求職者雇用支援機構
 障害者雇用納付金制度の概要
 7.資料編(1)障害者雇用率制度
 制度概要(令和6年度版)のリーフレット ※令和7年度版ではありません
ハローワーク飯田橋
 パンフレット「障害者の雇用に向けて」(令和6年4月版)