年金制度改正法が成立しました

最近ニュースでもよく話題になっていた「年金制度改正法」が、ついに6月13日に成立しました。
この法改正は、5年に1度の「公的年金財政の定期健康診断」ともいえる「財政検証」の結果を受けて行われたものです。

今回の改正では、いわゆる「106万円の壁」の撤廃をはじめとして、
私たちの働き方や老後の生活、そして企業経営にも関わる重要な見直しが多く盛り込まれています。

そこで今月のコラムでは、事業主の皆さまにとって特に影響の大きい3つの改正について解説します。

1.社会保険加入がさらに拡大されます

いわゆる「106万円の壁」が撤廃されます

今回の改正では、パートなどで働く方が厚生年金に加入しやすくなるよう
賃金要件(106万円の壁)が廃止されることになりました。
全国の最低賃金の引き上げ状況を見極め3年以内に行われます

働く企業の規模に関わらず加入するようになります

現在は、従業員が51人以上の企業で働く短時間労働者が加入対象ですが、
この企業規模要件も今後10年かけて段階的に撤廃されることが決まりました。
このことにより、将来的には週20時間以上働く方は、企業規模に関係なく社会保険に加入することになります。


厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
 より引用
個人事業所にも影響が

これまで、社会保険の適用対象外とされていた
飲食・小売など一部の業種の常時5人以上雇用する個人事業所
2029年10月以降は、社会保険の適用事業所として対象に含まれるようになります。
(当面の間、既存の事業所は除外されるようです)

厚生労働省 年金制度改正法が成立しました より引用

保険料負担を軽減する特例措置も

この改正により、新たに社会保険の対象となる短時間労働者について、
3年間は事業主が保険料を追加負担することで、本人の負担を軽減する特例措置が設けられます。
事業主が追加負担した保険料については、国等がその全額を支援するとのことです。
その他にも、各種助成金などでの支援策が検討されているようですので、
今後の情報を注視し、活用を検討したいですね。

2.在職老齢年金制度の基準額が引き上げられます

年金を受け取りながら働く高齢者の中には、
「収入が増えると年金が減らされるから、あまり働きすぎないようにしよう…」と考える方も少なくありません。
これは「在職老齢年金制度」によるもので、
現行では月収(賃金+老齢厚生年金)が50万円を超えると老齢厚生年金が減額されるという仕組みになっています。

今回の改正では、この基準額が2026年4月から「月62万円」に引き上げられることになりました。

これにより、高齢者の方が安心して働き続けられる環境が整い、人手不足対策の追い風にもなりそうです。

3.標準報酬月額の上限が引上げられます

社会保険料や将来の年金額の計算に使われる「標準報酬月額」。
現在の上限は、月65万円ですが、2027年9月から段階的に引き上げられることが決まりました
 ・2027年9月 → 月68万円
 ・2028年9月 → 月71万円
 ・2029年9月 → 月75万円
これにより、これまで上限に届いていたような高所得の方も、
実態に合った年金額を受け取れるようになります。(賃金月65万円以下の方の保険料は変化しません)

まとめ:今からできる準備を始めましょう

今回の改正は、働き方や家族構成の多様化への対応したものとなっており、企業にも少なからず影響があります。
特に、短時間労働者への社会保険適用拡大については、
企業規模などに応じて段階的に義務化されていくため、早めの対策が必要です。

まずは
 ・自社の規模ではいつから適用になるのか?
 ・短時間労働者が加入対象になった場合の人件費への影響はどのくらいか?
といった視点でシミュレーションを行うことをおすすめします。

また、今回は見送りとなった第3号被保険者(専業主婦など)についても、
今後の議論に含まれる予定
ですので、これからの動向にもぜひ注目しておきましょう。

制度の変更は不安を伴いますが、適切に情報を整理し、準備することで大きなトラブルは避けられます。
ご不明な点や気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

(ご参考)
厚生労働省
 いっしょに検証!公的年金
 年金制度改正法が成立しました
 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要