確認しましょう、法定三帳簿
4月も半ばとなり、新入社員の方の事務手続き等も少しずつ落ち着いてきた頃でしょうか。
今日はそんな時期に改めて労務管理の基本となる「法定三帳簿」について確認したいと思います。
「法定三帳簿」とは労働者を雇用した場合に整え、保存することが必要な3つの帳簿です。
具体的には「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿等」を指します。
それぞれ記載しなければならない内容や保存期間が定められていますので、
各帳簿について以下で詳しく見てまいりましょう。
1.労働者名簿(労働基準法第107条)
● 対象者
日雇労働者を除くすべての労働者
● 記載事項
① 労働者氏名
② 生年月日
③ 履歴
④ 性別
⑤ 住所
⑥ 従事する業務の種類(常時30人未満の労働者を使用する事業においては省略可)
⑦ 雇入れ年月日
⑧ 退職や死亡年月日、その理由や原因
● 様式
様式第19号 (記載内容に漏れがない場合はそれ以外でも可)
● 保存期間
労働者の死亡・退職・解雇の日より5年保存※
● その他
記載内容に変更があった都度更新します
2.賃金台帳(労基法第108条)
● 対象者
すべての労働者
● 記載事項
① 労働者氏名
② 性別
③ 賃金の計算期間(日雇労働者は省略可)
④ 労働日数
⑤ 労働時間数
⑥ 時間外労働時間数
⑦ 深夜労働時間数
⑧ 休日労働時間数
⑨ 基本給や手当等の種類と額
⑩ 控除項目と額
● 様式
様式第20号(常用労働者用)、様式第21号(日雇労働者用)
記載内容に漏れがない場合はそれ以外でも可
● 保存期間
労働者の最後の賃金について記入した日より5年保存※
● その他
賃金支払いの都度更新が必要です
3.出勤簿等(労働安全衛生法第66条の8の3など)
● 対象者
管理監督者やみなし労働時間、裁量労働制が適用される労働者も含む全労働者
● 労働時間の状況把握方法
原則:客観的な方法による
例)使用者自らが現認し確認する適正な記録、
タイムカードによる記録、PCのログインからログアウトまでの時間の記録等
例外:自己申告制によらざるを得ない場合は、様々な措置を講じて行う必要がある
● 様式
任意
● 保存期間
労働者の最後の出勤日より5年保存※
● その他
実は、出勤簿等については労基法に明確な定めはありません。
しかし、労基法には労働時間、休日、深夜業等について規定があるため
使用者には労働時間を適切に管理する責務があり、必要な帳簿とされてきました。
また、2017年策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関するガイドライン」には
労働日ごとに始業・終業時刻を確認・記録する必要があるとされており、
2018年の改正労働安全衛生法では労働時間の状況把握義務が明記されました。
日頃の労働時間の把握は残業代の支払いのみならず、社員の皆さんの健康管理の面でもとても重要です。
必ず出勤簿を作成し、労働時間の管理を適正に行いましょう。
※すべての帳簿の保存期間は2020年の労基法改正によって5年に延長されましたが、
当分の間は経過措置として3年とされています。
いかがでしたか?それぞれの帳簿について、改めてご確認いただけましたでしょうか?
なお、労基法にはこれらの帳簿を作成していなかったり、保存期間が守られていなかったりすると、
30万円以下の罰金に処せられるという規定がありますのでご注意ください。
法定三帳簿は各種労務管理ソフト等で対応されているものもありますが、
この機会に改めてご自身の会社で正しく管理できているか確認してみてください。
(ご参考)厚労省HP 改正労働基準法等に関するQ&A