育児・介護休業法の改正案が審議入りしました

育児・介護休業法といえば、最近では令和4年(2022年)に大きな改正があり、
規程の改訂等にご苦労された記憶がよみがえる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その育児・介護休業法について新たな改正案が今月4月11日に衆議院本会議で審議入りしました。
改正が決まれば来年4月以降に順次施行される予定です。
今回は中でも育児休業に関する部分についての内容を取り上げ、確認したいと思います。

1.改正案のポイント

改正案には様々な内容が含まれていますが、大きなポイントは3つだと考えています。

ポイント

① 子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応
② 仕事と育児の両立支援のための面談、意向聴取
③ 男性の育児休業取得促進

国も「男女ともに育児・家事を担いつつ、
希望に応じて仕事やキャリア形成との両立が可能になるようにしていくことが重要な課題
」、
「働き方の見直しが少子化に資する」としてこのような内容の改正案を作成したようです。

それではこの3つのポイントについて以下で詳しく見ていきましょう。

① 子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応

子の年齢に応じた、という部分は
「子が3歳になるまで」
「3歳~小学校就学前まで」
「小学校就学~小学校3年生まで」という3ステップに分けて両立支援の拡充が図られています。

(1)子が3歳になるまで

始業時刻の変更に加え、テレワークが努力義務化されます。
これまでは短時間勤務の他に柔軟な働き方の選択肢が法律では定められていませんでしたので
今回の改正は(努力義務ではありますが)従業員の方にとってかなり大きな意味があるように思います。

(2)子が3歳~小学校就学前までの両立支援

子が3歳~小学校就学前の期間については、柔軟な働き方を実現するための措置として
・始業時刻等の変更
・テレワーク等
・短時間勤務制度
・子を養育することを容易にするための新たな休暇制度の設置 
等の複数の制度より2つ以上を設けることが企業の義務になり、
労働者はこれら複数の中から一つを選択することができるようになります。

また、これまで子が3歳未満の場合に限られていた
「所定外労働の免除請求」が小学校就学前までできるようになるとされています。

(3)小学校就学~3年生 → 子の看護休暇制度の見直し

現在は小学校就学前までの子を養育する労働者が対象となっている子の看護休暇ですが、
今回、小学校3年生までの子をもつ労働者への支援拡充として大きく対象を広げることとなる予定です。

 現行改正案
対象労働者小学校就学前までの子を養育する労働者
※労使協定以下のうちで対象外とされた労働者
・勤続6カ月未満の労働者 ・週所定労働日数が2日以下
小学校3年生までの子を養育する労働者
※勤続6カ月未満の労働者に対する労使協定での除外制度を廃止
取得事由・子が負傷、疾病などにより世話が必要な場合
・子の予防接種や健康診断の受診の為
現行制度に加え…
感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加
 (入園(学)式、卒園式への参加を想定)
休暇の名称子の看護休暇子の看護休暇

②両立支援のための面談

ポイント①でみたように、これまでよりも両立支援に関する制度が充実することとなると、
その制度利用期間中に育児の状況や働き方に関する考え方等が変化することが想定されます
そのため、対象労働者に個別の意向を聞いたり、面談等を設けたりすることを義務とすることも改正案となっています。

これまでは…
妊娠や出産等の申出があった後、育児休業制度の個別周知や意向確認を実施するとされていましたが

今後はこれまでの機会に加えて、子が3歳になるまでの適切な時期にも
両立支援のための制度説明やその制度の利用意思などについて個別の意向を聴取し
状況に応じて、業務量の調整や労働条件の見直し等、本人の意向に配慮する義務がかされます

③ 男性の育児休業取得促進

男性の育児休業の取得を更に促進させるための案として
これまでは常時1,000人を超える労働者を雇用する事業主に義務とされていた
男性の育児休業取得率の公表
今後は常時300人超の労働者を雇用する事業主に義務付けられます

国の「こども未来戦略」では「男性の育休は当たり前」になる社会の実現を目指し
2030年には取得率85%を目指していますから、取得率の公表義務の拡大はその目標達成への一歩ということでしょう。

2.助成金にも変化が

今回の法改正の動きを見越して、今年度の両立支援等助成金には
「柔軟な働き方選択制度等支援コース」というコースが新設されています。

内容は、育児期の柔軟な働き方に関する制度を複数導入し、
「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づいて制度利用者を支援した中小企業事業主に支給される
というものです。

具体的に挙げられている「柔軟な働き方に関する制度」は以下の通りです。

令和6(2024)年度 両立支援等助成金の制度変更等をお知らせします」より引用


支給額は制度を2つ導入し、対象者が制度を利用した場合は20万円。
制度を3つ以上導入し、対象者が制度を利用した場合は25万円です。

法改正にあわせた規程改訂時には、こちらの助成金についてもご検討されるといいかもしれませんね。

3.さいごに

今回の育児介護休業法の改正は実務的にもまた大きなインパクトがあるものになりそうです。
まだ法案は審議に入ったところではありますが、
少しずつ情報を収集し、対応について準備を進めてまいりましょう。

ご参考
●厚労省HP
 第67回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(参考資料1-3)
  仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について(建議) 概要
 両立支援等助成金
  「令和6(2024)年度 両立支援等助成金の制度変更等をお知らせします 」
●衆議院
 第213回国会 議案
 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案
  提出時法律案

●内閣官房
 こども未来戦略