会社が行う熱中症予防対策と安全衛生管理体制について

関東ではまだ梅雨明け前にもかかわらず、
連日猛暑日となるような暑さが続いており、すでに夏バテ気味…という声も耳にします。
暑さに慣れていない時期は熱中症の危険性も高まりますので、注意が必要ですよね。

今月は厚労省などが実施する
「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の重点取り組み期間です。
厚労省の発表するデータによると、昨年1年間の職場での熱中症発生状況は
4日以上休業された死傷者が800人超、亡くなった方も30人とのことで、その数の多さには驚かされます。
熱中症は重篤化すると非常に危険ですが、正しく対策をおこなうことで防げるものでもあります。

今回は、会社が行う熱中症予防対策と
その対策の中心となる社内安全衛生管理体制について改めて考えてみたいと思います。

熱中症で労働災害を起こさないために

熱中症を引き起こすには、
「環境」 :高温、多湿、風が弱い…
「からだ」:活動による体温上昇、暑い環境に対応できないこと、睡眠不足や体調不良…
「行動」 :激し運動や労働、水分の摂取がままならない状況、長時間の屋外作業…
といった3つ要因が関係しているといわれています。

そう考えると、この3つの要因を少なくすることが熱中症予防に重要なポイントとなりますね。
熱中症予防のために、厚労省のキャンペーン期間には以下4点の側面から対策を講じるようにとされています。


①作業環境管理

暑さ指数(※1)の把握とその値に応じた熱中症予防対策の実施
・風通しの良い又は冷房の設備、直射日光や照り返しを遮る屋根やカーテン等を設ける
・冷房を備えた場所や涼しい場所の確保に休憩場所を設ける
・水分や塩分を補給するための飲料水等を備え付ける

※1暑さ指数とは

暑熱環境における熱ストレスのレベルの評価を行うことにより
熱中症発生リスクの有無をスクリーニングする指標です。
作業ごとの身体作業強度と衣類の種類によってその基準値が決まります。
実際にJIS規格に準じた暑さ指数計で作業環境の測定をし、それに応じた対応策を実施することが必要です。

②作業管理

・作業休止時間や休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での連続作業時間を短縮する
・徐々に暑さに慣れるよう配慮(梅雨明け直後、夏休み時期明け、新規配属者には特に注意する
・のどが渇いたという自覚がなくても、定期的に水分や塩分を摂取する
・透湿性・通気性の良い服装、冷却機能付き作業服や帽子等の着用する

③健康管理

・健康診断結果に基づく対応(熱中症ハイリスク者への配慮)
日常の健康管理・体調管理の徹底(場合によっては配置換え等)
・作業中の労働者の健康状態の確認(巡視を頻繁に実施し、声かけなどによって健康状態を確認)

④労働衛生教育

以下についての教育を実施する。
・熱中症の症状
熱中症の予防方法
  熱中症リスクが高まっていることの認識
  自らの体調管理に気を付けること(朝食の未摂取、睡眠不足、前日の飲酒量などが影響することを自覚)
  水分・塩分の摂取をこまめに行うよう意識づけ
  他の労働者の健康状態にも留意し、異変を感じた際にはすぐ管理者へ申し出るよう指導
緊急時の救急措置
  体調不良者を休憩させる場合は、一人にせず、悪化した場合の連絡・対応方法を確認
  少しでも異変を感じたら躊躇なく救急隊を要請
・熱中症の事例

これらの対策については、
衛生管理者などを中心とした社内の安全衛生管理体制に基づいて実施するよう求められています。

安全衛生管理体制について

「衛生管理者?社内の安全管理体制に基づいて実施??」と
あまりピンとこない方もいらっしゃったかもしれません。
以下では衛生管理者を中心に簡単に安全衛生管理体制についてご説明いたします。(詳細は来月以降に譲ります)

労働安全衛生法では、各事業場の業種や規模等に応じて、安全衛生管理体制を定めています。
定められた管理者等を選任し、労働災害の防止や、安全で快適な職場環境構築に取り組むことが義務
とされている管理体制のことを安全衛生管理体制といいます。

中でも、衛生管理者は労働者の健康障害を防止するため
常時50人以上の労働者を使用する(※2)すべての事業場で選任しなければなりません。(監督署への届出要)

※2常時使用する労働者の人数

日雇労働者、パートタイマー、アルバイト等の臨時的労働者の数を含めて常態として使用する労働者の数を指します。 
出典:事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」はどのように数えるのでしょうか。

また、週に1回以上職場を巡視し、設備や作業方法、衛生状態に有害な恐れがあるときは
ただちに措置を講じなければならないとされています。

そのため、熱中症予防対策では中心となるべき方ということになります。

なお、常時10~50人未満の事業場では、安全衛生推進者、衛生推進者を選出し(届出不要、社内周知が必要)
安全衛生に係る業務を担当させることが必要ですので、小規模事業所の皆様も改めてご確認ください。

まとめ

今回の厚労省のクールワークキャンペーンで掲げられている熱中症予防対策は
主に屋外での作業場を想定されたものと中心となっておりますが
熱中症は屋外作業時だけに発症するものではありません
この夏も暑くなることが予想されます。
屋内でのお仕事が中心の会社の皆様も、会社の安全配慮義務をきちんと果たせているか、
社内の安全衛生管理体制を改めて確認し、
熱中症予防対策について考える機会を設けてみてはいかがでしょうか?

ご参考:
 ●厚労省 特設サイト
  職場における熱中症予防情報
 ●クールワークキャンペーンについて・資料
  STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)
  令和5年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱
  STOP!熱中症 クールワークキャンペーン リーフレット
  パンフレット「職場の熱中症予防対策は万全ですか?」
 ●通達
  令和3年7月26日付け「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」基発0726第2号
 ●環境省 特設サイト
  環境省 熱中症予防情報サイト内 熱中症予防対策