労働条件明示のルール変更まで半年を切りました

本日は、制度改正まで半年を切った
「労働条件明示のルール」について改めて確認をしたいと思います。

今回、労働基準法施行規則(第5条)雇止めに関する基準の改正に伴い
2024年4月1日より労働条件の明示事項等が変更されることになりました。

変更点は、これまでの労働条件の明示事項に新たに以下が追加されるという点です。
① 就業場所や業務の変更の範囲
② 有期労働契約の更新上限の有無と内容の明示
③ 無期転換申込機会の明示
④ 無期転換後の労働条件の明示

順に詳しく見てまいりましょう。

変更点① 就業場所・業務の変更の範囲の書面明示

対象となる人   : 全ての労働者
明示のタイミング : 労働契約の締結時、有期労働契約の更新時


これまでも、労働契約の締結時に想定されている就業場所や業務を労働条件通知書等に記載することは必須でしたが
今後はその労働契約の期間中における就業場所や業務の「変更の範囲」まで書面で明示することが必要となります。
これにより、勤務地や業務について今後の見込みも含めて明示するということを改めてご確認ください。

具体的な明示方法を考えてみます。

【例1】就業場所・業務に限定がない場合 ※すべての就業場所・業務を含める
就業場所:
(雇い入れ直後)本店及び労働者の自宅 (変更の範囲) 会社の定める場所(テレワークを行う場所を含む)
従事すべき業務:
(雇い入れ直後)店舗における会計業務 (変更の範囲) 会社の定める業務


【例2】雇い入れ時から契約期間中に変更がない場合 ※その旨を明確に!
就業場所:
(雇い入れ直後)本社   (変更の範囲)変更なし 
従事すべき業務:
(雇い入れ直後)商品補充 (変更の範囲)雇い入れ直後の従事すべき業務と同じ

このような例の他にも「変更の範囲」には、
・復職明けの時短勤務の際などに一時的に限定がある場合
・エリアや業務をある程度限定した採用をしており、就業場所や業務の一部に限定がある場合
など、会社によって様々なケースが考えられると思います。
労働条件の明示の際には、対象の方の将来的な業務まで考慮した上で
トラブルの未然防止のためにも、なるべく労使の間で認識にズレがないよう確認することが重要です。

変更点② 有期契約労働者に対する更新上限の有無、内容の明示

対象となる人   : 有期契約労働者
明示のタイミング : 契約の締結と契約更新時ごと

これまで特に明示事項とされていなかった有期契約労働者に対する更新上限の有無
更新条件がある場合のその内容も今後は明示が必要になります。

更新上限とは、有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限を指し、
「契約期間は通算4年を上限とする」や「契約の更新回数は3回まで」等という明示例が考えられます。

ご注意ください

これまで更新上限を設けておらず、最初の契約締結より後に更新上限を新設する場合や、
最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合は、
予め(新設・短縮を行う前のタイミングで)その旨について説明することが必要になります。

変更点③ 有期契約労働者に対する無期転換申込機会の明示
変更点④ 無期転換後の労働条件の明示

対象者となる人  : 有期契約労働者
明示のタイミング : 「無期転換申込権」が発生する更新時

確認しましょう「無期転換ルール」

 同一の企業との間で、通算5年を超えて有期労働契約を更新した際労働契約法に基づき、無期転換申込権が発生します。
 対象者が会社に対してこの申込を行った場合、無期労働契約が成立します。(会社側に拒否権はありません)

今回の変更で、
初めて無期転換申込権が発生する更新時だけでなく、その契約が満了した後も更新の度に明示が必要となります。
また、無期転換申込権が発生する契約更新時には、無期転換後の労働条件の書面での明示が必要です。

これを図で表したものが以下のものです。2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?より引用)


繰り返しになりますが、無期転換権が発生した後も有期契約を続ける場合、
更新の度に無期転換申込機会や無期転換後の労働条件について明示することとなりますので
上図をご参考に改めてご確認ください。

なお、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに
就業の実態に応じて、正社員等(いわゆる正規型の労働者、無期雇用フルタイム労働者)との
均衡を考慮した事項(例:業務内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について説明するようこと
も努力義務とされました。
正社員の業務や待遇との違いを分かりやすく説明することで、
無期雇用への転換(=人材の定着)につなげられる可能性があがるかもしれませんね。

さいごに

このように、来年4月からは労働条件を明示する際にこれまでの明示事項に追加される項目があります。
予め内容を確認し、現在使用されている労働条件通知書等の様式を再度見直してみてください。

ご参考
●厚生労働省HP
 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります
 2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?
 モデル労働条件通知書
 労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について